2021/11/04 20:39
2021年11月吉日、以下の内容でニュースレターを配信しました。
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食材選び、店選び
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『お初天神 ほくりゅう』です。
このメールは「ぐるなび」および当店HPから会員登録頂いた皆様にお送りしております。
「日本酒ゴーアラウンド」なんとか乗り切りました。蓋を開けてみればいつも通りの高速回転で、しかも今年は運悪く臨時スタッフが手配できなくて、大変でした。
自分としては今までで一番不本意な内容でしたが、得るものもあったので、今後に活かしていきます。
今回、イベントの料理メニューを考えていたとき、「龍勢」に合わせて、「マグロのヅケの酢味噌添え」が頭に浮かんだんですが、普段使わない食材に無理に手を出すこともないかと思い、却下しました。
スーパーに行けばマグロもアナゴもホタテも、水産物はみんな一緒に並んでいますが、飲食店の仕入先としては、それぞれ別の業者になるんですよね。沖合いから遠洋のものですし、あの大きさですし、それで寿司ネタの筆頭だから固定客に囲われてる感じの食材。僕らは沿岸の活けモノ(生きたままか即死させたもの)を季節の移ろいのなかで様々に買ってくるので、マグロはやや毛色の違う食材ということになります。
資源の問題もあります。ウナギもそうですが、資源量や資源の取り扱いについて、業界は欺瞞に満ちているように思います。減ってるなら値段を上げないといけませんよね。ありったけ掻き集めて値段の維持に努めるのではなく。そこらのスーパーじゃ買えないものにしていかないと。
マグロ、イカ、エビ、このへんは冷凍してもそこまで食味が落ちないせいもあって、クッソ便利に使われています。旅館や定食屋がマグロ依存から抜け出すのは不可能なレベルです。
漁獲圧がぐんと下がるぐらいに、高級レア食材に「キャラ変」してしまえば、漁業者も、魚種も、その魚が好きな人も、持続可能なはずですが、マグロほど便利で需要も高いと、キャラ変させてもらえませんね。
近年の海水温上昇で日本近海の漁場は一部で致命的に変化しており、サンマなんかは「高いか、悪いか」のどっちかしか売ってません。僕はまあ、それはそれで、サンマの塩焼きが食べられるのは貴族だけになっても良しだと思っておるのですが、なんとかして現状維持しよう、取り繕おうとするバイアスは、ちょっと嫌いですね。
実はウチでは、鶏卵ふくむ肉類も使っていません。これはもう「意固地」の世界で、まわりがあまりにも肉に偏向しているので、僕だけは魚の味方をしたい、そんな意向からです。味方と言いながら捌いて食べてるんだから何者かわかりませんが、それにしてもブタやトリを日本人は食べ過ぎちゃいますか。こんな島国なのに…。
ついで言っておくと、ウチでは、砂糖、化学調味料(アミノ酸)、着色料など添加物の類、瓶詰め食材など既製品、中国産、冷凍食品など、使わないようにしている食材、自分に課した制約は、結構あります。啓蒙が度を過ぎると価値観の押し付けになって嫌われるので、アピールした気持ちを抑えてニヒルを貫いていますが、安心して食べられる店であるということは、来店して僕が何をしているかを見ることによって、知ってほしいですね。
ちなみに砂糖は、日本酒と相性が悪いから使いません。家庭料理で砂糖を使う場面では、僕たち日本酒専門店は「みりん」を使います。
アミノ酸は、アホ舌の原因物質なので使いません。ポテトチップスひと袋の中に塩はこんだけしか入ってません!ってテレビでやっていたけど、アホかと。それアミノ酸どっさり入れてるからやんって。ほんまに塩味にすると「やめられない止まらない」になりませんからね。
アミノ酸断ちすると味覚は1ヶ月ぐらいで正常に戻るらしいです。アミノ酸断ちした人間が安物の料理を食べると、後から舌がヒリヒリするからすぐわかるんです、安物やったなって。
まあ食も酒も楽しむことが第一ですから、うるさく思われるような小言はやめておきましょう(自粛)。
思うに、日本酒専門店には「民芸運動的モチベーション」が常にあって、里山の風景の中に酒蔵があって、米が蒸され酒が醸されていく「営み」は、doではなくbe、だから見守りながら応援したい、そういう気持ちがあります。そしてその横展開で、漁業や林業や様々な手仕事に対しても投資する気持ちがあります。
言うても飲食店なので、呑気なことをやっていると店が潰れます。店主には打算的なところもかなり必要なのです。そうなると、結局、消費者にはますます真贋が難しくなりますので、シリアスな者同士でつながることは稀になります。本物志向の店主も打算でニセの毛皮を被ったりしてるわけですから、経営のために。
「ベジ農園玄米カフェ」みたいな、ようわからんけどオシャレで体に良さそうなテナント業態あるじゃないですか。あれもどこまでシリアスかはわからないけど、最低限あそこを選んでくれる層を増やさないことには、僕らシリアスの仲間集め運動の発展なんて期待できないと思いますよ。
店主のこだわりに値がついた時代は良かったけど、今はこだわりというのは敬遠される時代です。レベル感を下げ、オシャレ感を上げないと、選んでもらえません。だから今は、感覚的にイケてそうな店を選びながら、店と客が個別に親しくなってから、お互いの性癖を探り合うのがいいのでしょうね。食の真剣度とその方向性なんて、ちょっとした会話でもすぐわかりますから。
そんなわけで、日本酒専門店をゴーアラウンドできる「日本酒の日」イベントは素晴らしい、来年も頑張るぞ!っというお話でした。
大阪メトロ谷町線 東梅田駅徒歩5分
お初天神(露 天神社)の中を通り東門を出てスグ
※ 露 天神社は東西南北に通り抜けできます。ここを目標にしていただくのが確実です。
※ 当店は全席禁煙とさせていただいております。また、日本酒以外のドリンクはあまり多くはご用意しておりませんので、あらかじめご了承ください。