2021/04/08 16:20
2021年4月吉日、以下の内容でニュースレターを配信しました。
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利己的な遺伝子
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『お初天神 ほくりゅう』です。
このメールは「ぐるなび」から会員登録頂いた皆様にお送りしております。
去年の今ごろは、最初の緊急事態宣言が出ていた頃です。うちは宣言期間中、休業していました。あれから一年経った今現在どうかというと、20時までの時短営業中です。この状況、いつまで続くのでしょうか?(ラストオーダーは19時ですのでご注意ください。)
ところで……。
ウイルスというのはダニやカビや雑菌よりももっと小さい生き物で、生き物というより「電気」みたいなもんだと、ぼんやり認識しているのですが、間違ってますかね? 電気が、導線の上を走るように、ウイルスは、細胞から細胞へと伝播していく、のかな?
ちょっとミクロの世界に入ります。
生き物の基本単位である細胞の中には、一つの細胞核と、いくつかのミトコンドリアなどの小器官が入っていて、一個一個の細胞が、他の細胞と、情報やエネルギーをやりとりしている。で、その細胞核の中に収まっている一番大事なモノが、遺伝子ですね。
お酒を作る「酵母」は「単細胞生物」ですが、単独で生きてるか複数で生きてるかの違いがあるだけで、ミクロの視点では、僕らの体の中の細胞とだいたい同じみたいですよ。自己複製して遺伝子のコピーを残すことで、生きている(地球上にずっと存在し続けている)のが、やつらです。
僕は日本酒を「吟味」するとき、まず味わいについて記録をとります(脳内で)。それから、スペックや醸造元についての情報など、いわゆるストーリーの部分を調べて整理します(酩酊した脳内で)。日本酒を売るお仕事では、このように個々の商品に対し二つの側面からアプローチすることが、大事です。
話が逸れましたが、今回、遺伝子がどうのこうのと言っておりますが、化学の授業みたいなテーマではなくて、「動物行動学」の話です。
動物行動学というのは、有名な「ダーウィンの進化論」の系譜にある研究分野で、人間社会の謎も説明してくれたりする、ちょっとかじるだけでも面白い分野です。
この分野で一番有名な古典「利己的な遺伝子」(リチャード・ドーキンス、1976)によると、女王アリの卵を守るためだけに生きている自己犠牲的な働きアリも、アザラシがいないか確認するために群れの仲間を海に蹴落とすペンギンも、「個人」を主体として考えるのではなく「遺伝子」を主体として考えれば、生存戦略としては同じプログラムで動いている、といいます。
働きアリの体を構成する細胞の中には女王アリと同じ遺伝子が入っているから、遺伝子のきもちになって考えたら、自分の子孫(つまり遺伝子のコピー)を残すために、それぞれの「宿主」を動かしている、と。この利己的な遺伝子というモデルで、人間な様々な行動も単純化して説明できる、と。
ただし人間の場合、脳が高度に進化したので、動物の行動からはみ出した部分をこのモデルで説明するためには、「ミーム」という概念で補う必要がある、と続きます。ミームは遺伝子の言語版、と考えたらいいと思います。
例えば「バグってる」という言葉はそれ自体がミームです。モテたい気持ちも、浮気を許さない気持ちも、ミームです。こういった遺伝子やらミームやらの共通の宿主が、わたしたちひとりひとりの人間だということです。
複製と突然変異を無数に繰り返す中で、もっとも適応力の高い遺伝子が勝ち残る、というのが進化論です。サルからヒトに進化したのち、男は男らしく女は女らしく「進化」していきます。文明化してくると、遺伝子およびミームは、カオス状態で生存競争を繰り返しますが、プログラムは石器時代と同じです。
肥満を嫌うミームや、同性愛を嫌悪するミームは、対立するミームよりも圧倒的に多くの宿主を獲得してきました。それが、最近は様子が違ってきた。社会で嫌われ者になると子孫を残せないからですね。21世紀以降は、それだけ「社会」が影響力を強く及ぼすようなったということですね。
ミームはインターネットという宿主を得た、という人もいます。恐ろしいですが、あり得ますよね。ネット上で拡散することは、ひと組の男女が結ばれることと同じくらい利益がある、利己的な遺伝子にとっては。リアルでの容姿や社会的地位は邪魔なものになりつつあり、20世紀まで強かったミームは次々と絶滅していっています。
この一年で、リモート飲み会なんてものまで登場してきましたが、さてさて、未来の酒場はどうなることでしょう。
大阪メトロ谷町線 東梅田駅徒歩5分
お初天神(露 天神社)の中を通り東門を出てスグ
※ 露 天神社は東西南北に通り抜けできます。ここを目標にしていただくのが確実です。
※ 当店は全席禁煙とさせていただいております。また、日本酒以外のドリンクはあまり多くはご用意しておりませんので、あらかじめご了承ください。